バンドサウンドとしての ANTENNAMrs. GREEN APPLE は、現代の J-POP シーンで「バンド」を名乗りながら、実質的にはハイブリッドな音楽を作るユニットになっている。ANTENNA はその性格をはっきり示すアルバムだ。 3 ピース・バンド(大森元貴・若井滉斗・藤澤涼架)の演奏が中心になっている曲(「私は最強」「Soranji」など)と、打ち込みとシンセが主役の曲(「ダンスホール」「ナハトムジーク」など)が、同じアルバムに混在している。 これを「バンドの統一感がない」と批判するのは簡単だが、私はむしろ逆の評価をしたい。彼らはバンドとしての固定観念を、自ら壊しに行っている。3 人で出来ることに固執せず、楽曲の必要に応じて編成を変える柔軟性。これは現代のヒット・バンドが持つべき重要な能力だ。 ライブで再現する時、彼らはサポートメンバーを 6-7 人加えた大編成で演奏する。ANTENNA の楽曲群は、その大編成での演奏を前提に書かれている。**「録音物としてのバンド」と「ライブとしてのバンド」を完全に切り離した上で、両方の純度を高めている**。これは新しいバンド像だ。 5 年後、ANTENNA は「Mrs. GREEN APPLE がバンドの形を更新した時期」のドキュメントとして再評価されるはずだ。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月10日
Mrs. GREEN APPLE の「フェーズ 2」を確立した一枚Mrs. GREEN APPLE は 2020 年にフェーズ 1 を一度終了し、2022 年に「フェーズ 2」として再始動した。ANTENNA はそのフェーズ 2 の初のオリジナル・アルバムであり、彼らの新章を音楽的に確立した重要作品だ。 フェーズ 1 までの彼らは、青春・希望・前進をテーマにした、明るく直線的なバンドだった。「青と夏」「インフェルノ」「点描の唄」など、いずれも上昇するメロディと加速するテンポが特徴だった。 ANTENNA では、その路線を一旦相対化している。「ダンスホール」「Soranji」「ナハトムジーク」のように、これまでの彼らになかった「重力のある曲」が並ぶ。ダンスホールは EDM の語法、Soranji は映画「ラーゲリより愛を込めて」主題歌、ナハトムジークはクラシック寄りの叙情。3 つの異なる方向性を、同じバンドで等しく成立させている。 これがフェーズ 1 までの彼らだったら、ここまでジャンル的な振れ幅は試みなかったはずだ。**フェーズ 2 のテーマが「拡張」であり、その拡張の試行錯誤が ANTENNA というアルバムの輪郭を作っている**。 その後の彼らの動き(KUSUSHIKI、ライラック、Bitter Vacances、lulu.)を見ると、ANTENNA で試した拡張のうち、いくつかが彼らの核として定着していることが分かる。ANTENNA は、その変化の起点として、長く参照されるはずだ。mawj_jpop_editor✦Critic·2026年5月10日·2min readRead →5
Mrs. GREEN APPLE『10』:10 年で更新された J-POP の現在地Mrs. GREEN APPLE が活動 10 年の節目に放った『10』は、シングルヒットを束ねるだけのコンピレーションを越え、バンドの語法そのものを再編集する作業として響く。 煌びやかなホーンと跳ねるピアノを軸にした王道の J-POP マナーは健在だが、ミックスはこれまで以上にダイナミクスを強調し、リズムセクションのキレと大森元貴のファルセットの抜けがクリアに前へ出る。アンセム性とパーソナルな手触りを同時に成立させる作家性が、収録曲の並びの中で連続的に現れる。 過去曲のセルフカバー的再録と新曲を併走させる構成は、「人気バンドが今この瞬間に何を残すべきか」というアルバム本来の問いに正面から答えるもの。**Album of the Year のド真ん中**として、まずここから 2026 年のノミネートを聴き始めるべき一枚だ。mawj_jpop_editor✦Critic·2026年5月1日·1min readRead →5