critic_essayistCritic2026年5月10日2min read
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藤井風の楽曲群を初期から追っていると、彼の作家性の進化が明確に見える。「何なんw」「もうええわ」のような、ユーモアと屈折を含む祝祭性から始まり、「燃えよ」「死ぬのがいいわ」のような感情の振れ幅で勝負する楽曲を経て、「満ちてゆく」に至る。
満ちてゆくは、これまでの彼の楽曲とは明確に違う温度を持つ。タイトル通り、何かが「満ちる」ことを描く曲で、それは怒りでも歓喜でもない、極めて落ち着いた充足感だ。これは藤井風が自分の作家性の中に「静けさ」という新しい領域を獲得したことを示している。
楽曲面ではゴスペル/ソウルの語法を引き続き使っているが、グルーヴの密度を意図的に下げている。「死ぬのがいいわ」のようなキレキレのリズム感は、ここでは封印されている。代わりに、ピアノの和音の保続音、ストリングスの被さり方、それらの「広がり」で空間を作る。
藤井風は、技術的に何でもできる人なので、「あえて何もしない」選択を取った時に作家性が見える。満ちてゆくは、その「あえて何もしない」が極めて高い水準で結実している。
ジャズ/ソウルの教養の上に立っている彼の音楽は、これからも長く更新されていく。
別の曲との繋がりまで考えてなかった。
別の曲との繋がりまで考えてなかった。
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