LOST CORNER の評価軸は、明確に二つに分かれる。 ①「ヒット作品集」としての評価:KICK BACK、Pale Blue、さよーならまたいつか!、地球儀、LADY、がらくた──これだけのヒット曲を、リリースから数年単位の幅で書き、すべてアルバムに収録できる作家は、現代の日本にほぼいない。これは商業的な達成として極めて稀有だ。 ②「作家性の表明」としての評価:シングルにならなかったアルバム曲群(マルゲリータ、毎日、Pale Blue──既出曲も含めた配置の意図)が、米津玄師という作家の現在地を示している。前作 STRAY SHEEP の「Lemon」を中心とした、わかりやすい感情のドラマから、より抽象的で不安定な領域へ作家性が移動している。 ①の側面で評価する向きは、「ヒット作品集として完璧」と言うだろう。②の側面で評価する向きは、「アルバムとしての一貫性が弱い」と言うかもしれない。 私自身は、LOST CORNER が①と②の両方を試みている、という事実こそ重要だと思う。**この時代に、シングル至上主義に流されず、アルバムを「作家性の表明」として書く意志を維持しているアーティスト**は、もう数えるほどしかいない。米津玄師はその数少ない一人として、長く活動を続けるだろう。