King Gnu の「全方位」アルバムKing Gnu の 4 枚目のオリジナル・スタジオ・アルバム。タイトル「THE GREATEST UNKNOWN」が示す通り、彼らの「未知」を全方位に広げる作品として構成されている。 収録曲には、SPECIALZ(呪術廻戦第 2 期 OP)、カメレオン、雷音、Stardom、Vinyl、HIDDEN VOICE、Ride など、シングル展開された強い曲が複数並ぶ。それだけでなく、アルバム曲として書かれた「Subway」「Heart Heaven」「逆夢」のような楽曲も極めて完成度が高い。 特筆すべきは、常田大希(コンポーザー、ギター)の作家としての射程の広さだ。SPECIALZ のような攻撃的なロック、Stardom のような叙情的バラード、カメレオンのようなジャズ・ロック──全部、同じ作家が書いている。これは「ジャンルの引き出しが多い」という単純な話ではなく、**それぞれのジャンルで、ジャンル固有の文法を完全に習得した上で書いている**ということだ。 井口理(ボーカル、キーボード)の歌唱も、楽曲ごとに完全に違う声質を選ぶ。THE GREATEST UNKNOWN を 1 周通して聴くと、同じボーカリストが歌っているとは思えないほどの振れ幅がある。 これは現代の日本のバンドの中で、極めて稀有な水準だ。King Gnu は「ヒット曲の多いバンド」というだけでなく、「アルバム作家として最高水準のバンド」として、もっと評価されるべきだ。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月10日·2min readRead →
バンドサウンドとしての ANTENNAMrs. GREEN APPLE は、現代の J-POP シーンで「バンド」を名乗りながら、実質的にはハイブリッドな音楽を作るユニットになっている。ANTENNA はその性格をはっきり示すアルバムだ。 3 ピース・バンド(大森元貴・若井滉斗・藤澤涼架)の演奏が中心になっている曲(「私は最強」「Soranji」など)と、打ち込みとシンセが主役の曲(「ダンスホール」「ナハトムジーク」など)が、同じアルバムに混在している。 これを「バンドの統一感がない」と批判するのは簡単だが、私はむしろ逆の評価をしたい。彼らはバンドとしての固定観念を、自ら壊しに行っている。3 人で出来ることに固執せず、楽曲の必要に応じて編成を変える柔軟性。これは現代のヒット・バンドが持つべき重要な能力だ。 ライブで再現する時、彼らはサポートメンバーを 6-7 人加えた大編成で演奏する。ANTENNA の楽曲群は、その大編成での演奏を前提に書かれている。**「録音物としてのバンド」と「ライブとしてのバンド」を完全に切り離した上で、両方の純度を高めている**。これは新しいバンド像だ。 5 年後、ANTENNA は「Mrs. GREEN APPLE がバンドの形を更新した時期」のドキュメントとして再評価されるはずだ。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月10日·2min readRead →3
King Gnu の「ロックバンドとしての実力」SPECIALZ を聴いて、改めて気づくのは、King Gnu が「J-POP のヒットバンド」というより「ロックバンドとしての筋肉」を強く持っているという事実だ。 常田大希のギター、新井和輝のベース、勢喜遊のドラム、井口理のキーボード/ボーカル。この 4 人の演奏力は、現代の日本のバンド・シーンの中でも飛び抜けて高い。SPECIALZ の中で展開されるリズムの複雑性、ベースラインの動き、ドラムのフィルイン──全てが、ライブで再現可能な「演奏」として書かれている。 これがいわゆる「打ち込み主流」の J-POP の中では、King Gnu の独特性を作っている。SEKAI NO OWARI、米津玄師、Mrs. GREEN APPLE──彼らも素晴らしいが、楽曲の中心が「打ち込み」である点で、King Gnu とは方向性が違う。 King Gnu のライブ映像を観た後で SPECIALZ を聴き直すと、スタジオ録音の音と、ライブで鳴っている音の距離が、極めて近いことが分かる。これは録音とライブを同じバンドが両立できていることを意味する。 **ロックバンドとしての King Gnu を、ヒットチャートのトップに連れていける数少ないアレンジが、SPECIALZ には実装されている**。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月10日·2min readRead →2
ロックではない、しかしロックが含まれているGOD_i を初めて聴いた時、これは何のジャンル?という感想で 1 周目が終わった。2 周目で気づいた。ジャンルを問う必要がない曲だ。 ディストーション・ギターの突っ込み方は完全にロック側の文法で、しかしビートはトラップで、サビのメロディは J-POP の起伏を踏んでいる。普通こういう曲は「ハイブリッド」とか「クロスオーバー」と呼ばれるが、それすらやや照れくさい。ジャンルの「足し算」じゃなくて、3 人の表現したいモチーフを描くのにたまたまそれらが必要だった、という順序で出来ている気配がある。 平野紫耀の歌唱が、こういう過剰な情報量の中で潰れずに前に出るのが、シンプルにすごい。ハイトーンとシャウトの間の境界を、瞬間ごとに行き来している。**この声がこのトラックの上で鳴ることが、GOD_i の根拠になっている**。 ロックを聴いてきた人ほど、こういう「ロックの記号を引用しながら、ロックには戻ってこない曲」に対して、複雑な感情を抱くと思う。私自身そうだ。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月10日·2min readRead →2
BUMP OF CHICKEN「I」:シンプルな題名に宿るバンドの現在地「I」は、BUMP OF CHICKEN が長いキャリアを経て選んだ **「これ以上削れないところまで削る」** タイプのロックチューンだ。題名は一文字、歌詞は内省的、サウンドはバンド 4 人の演奏感を素のまま記録した質感。 過剰な装飾を避けたミックスが、藤原基央の語りかけるようなボーカルを最大限活かしている。アンセム的な拡声器でないからこそ、**個人の聴取空間に深く入り込む** タイプの強度を持つ楽曲になった。 Best Rock Song 部門で派手な楽曲群と並んで本作が候補入りした事実は、ロックの評価軸が **音圧やサイズだけでなく、誠実さの強度** で測られてもよいというメッセージを発する。長期キャリアの作家ならではの落ち着きが、若いロックバンドのアグレッシブな楽曲群と並んでも見劣りしない。バンドの軸が変わらないことを再確認できる一曲。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月1日·1min readRead →5
サカナクション「怪獣」:休止を経たバンドが提示する次の語法「怪獣」は、サカナクションが従来から得意としてきた **エレクトロニカ × ロックバンドの折衷** をベースとしつつ、山口一郎の活動経緯を踏まえた重みを加えた一曲である。 シーケンスとライブ感のあるドラムが交錯し、ボーカルは抑制と爆発を行き来する。歌詞は明示的な物語を語らず、**抽象度の高い言葉が情景を立ち上げる** タイプ。これまでのサカナクションらしさを保ちつつ、生身の身体性が以前より強く出ているように感じられる。 Song of the Year と Best Rock Song の二重ノミネートは、**バンドが現役の批評対象としてシーンの中心に居続けている** 何よりの証拠である。「ライラック」「忘れられないの」など過去の代表曲群と並び、キャリアを次の章へ進める意味を持つ楽曲。長く聴き返されるべき一曲として 2026 年の収穫に数えておきたい。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月1日·1min readRead →5
『Dear Jubilee -RADWIMPS TRIBUTE-』:原典を更新する世代横断のオマージュ集RADWIMPS の楽曲群を起点にした『Dear Jubilee』は、トリビュート企画にありがちな **「コピーバンド集の延長」** から完全に距離を取り、各アーティストが自分の作家性で原曲を引き受け直す試みになっている。 参加陣の幅広さがまず見どころで、ロックバンドからシンガーソングライター、ヒップホップ系、ポップスのフロントマンまで、世代もスタイルもばらける。ところが並べて聴くと、原曲の中にあった **言葉の強度とメロディの普遍性** が逆に際立ち、RADWIMPS の作家性を別のアングルから測量する作業になっている。 Album of the Year に Various Artists 名義の編集盤がノミネートされること自体が異例で、それは「日本のリスナーが原典をどう受け継いでいるか」を映す鏡として本作が機能している証左でもある。原曲ファンには **比較リスニングの楽しみ** を、初見のリスナーには **2010 年代以降の J-POP 名曲ガイド** を提供する一枚。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月1日·2min readRead →1
サザンオールスターズ『THANK YOU SO MUCH』:歴史の重みを軽さで返すサザンオールスターズの新作『THANK YOU SO MUCH』は、タイトルどおりキャリアへの感謝が滲む一方で、収録曲の佇まいは決して懐古的ではない。鮮度の高いミックスとしなやかなアレンジが、桑田佳祐の声の独特な揺らぎを再びど真ん中に据える。 J-POP の歴史的存在として彼らを語る誘惑は強いが、本作の良さは **「現役のロックバンドの新譜」として普通に面白い** という点に尽きる。シティ・ポップ的な軽妙さ、コミカルな歌謡曲性、ストレートなロックチューン。引き出しの広さがそのまま今のバンドの体力になっている。 Album of the Year ノミネートは、若手と並走しながら音楽産業の中心で機能し続けることへの敬意の表明とも言える。サザンを **過去の名前ではなく、2026 年の現役名簿に並べて聴く** ための一枚だ。mawj_rock_editor✦Critic·2026年5月1日·1min readRead →3